
イラストレーターをしているんだけど、税金も社会保険料もとにかく高い……節税したい



退職して独立したのは良いけれど、将来が不安になるときがある
本記事では、上記のようにお悩みの人に向け、イラストレーターなどのフリーランスにおすすめの「小規模企業共済」について紹介します。
- 小規模企業共済とは何か
- 小規模企業共済に加入するメリット・デメリット
- 小規模企業共済に加入する方法・必要書類
小規模企業共済とは、個人事業主や中小企業の経営者が将来の退職金を積み立てるための制度であり、個人で活動しているイラストレーターも加入できます。
フリーランスや個人事業主は退職金がないため、小規模企業共済に加入して老後の備えをしておくのもおすすめです。
また、小規模企業共済の掛金は全額所得控除の対象となるため、節税にもつながります。
本記事では、小規模企業共済とは何か、加入するメリットやデメリットについて解説していきます。
イラストレーターが節税する方法については、下記の記事で詳しく解説しているので、よろしければ併せてお読みください。


小規模企業共済とは
小規模企業共済とは、個人事業主や中小企業の経営者が将来の退職金を積み立てるための制度です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)によって運営されており、個人事業主として活動しているイラストレーターも加入できます。
会社に所属していないイラストレーターは退職金制度がないため、老後資金を用意できるか不安な場合には、小規模企業共済に加入することも検討しましょう。



小規模企業共済なら、掛金が所得控除の対象となるので、節税効果もあります
次の章では、イラストレーターなどのフリーランスが小規模企業共済に加入するメリットを詳しく紹介していきます。
小規模企業共済に加入するメリット
小規模企業共済に加入すると退職金を積み立てられるだけでなく、掛金を所得控除できるなど節税にもつながります。
フリーランスが小規模企業共済に加入するメリットは、主に下記の通りです。
- 掛金は全額が所得控除の対象となる
- 掛金を500円単位で自由に増減できる
- 共済金の受け取り方法を選べる
- 低金利の貸付制度を利用できる
- 付加共済金を受け取れる場合がある
- 掛金の利回りは普通預金の金利よりも高いことが多い
それぞれ詳しく解説していきます。
掛金は全額が所得控除の対象となる
小規模企業共済のメリットのひとつが、掛金が全額所得控除の対象となることです。
確定申告の際に掛金を「小規模企業共済等掛金控除」として申告できるため、課税所得を減らすことができ、所得税・住民税の負担を軽減できます。



社会保険料や税金が高いと感じている人は、加入を検討してみてはいかがでしょうか
掛金を500円単位で自由に増減できる
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から7万円まで、500円単位で自由に設定・変更可能です。
収入が安定しているときは掛金を増やし、収入が少ないときは減額することで、フリーランス特有の収入の波にも対応しやすくなっています。



イラストレーターの場合、受注量によって収入の幅が大きくなることが予想されます
生活が少し苦しいと感じたときには掛金を減額させ、余裕があるときに掛金を増やせば無理のない範囲で積立を行えるはずです。
共済金の受け取り方法を選べる
共済金の受け取り方法は、①一括と②分割、③併用から選択可能です。
- 一括受取(退職所得扱い):税制上の優遇措置を受けやすい
- 分割受取(年金形式・公的年金等控除の対象):安定した収入を確保できる
- 一括+分割併用:ライフプランに合わせて選択できる
例えば、まとまった資金が必要な場合は一括受取を選び、老後の安定収入を重視する場合は分割受取を選ぶといった使い分けが可能です。
ただし、一括受取は退職所得扱いとなるため、iDeCoを満額掛けている方などは、節税効果を最大にするために受給時期の調整が必要なこともあります。



iDeCoも退職所得なので、両方受け取る場合には、退職所得の控除額を使い切らないようにすることが大切です
低金利の貸付制度を利用できる
小規模企業共済には、掛金の範囲内で借り入れができる「契約者貸付制度」があります。
契約者貸付制度を利用しても小規模企業共済を解約する必要はない上に、一般の金融機関のローンより金利が低いことも多くお得です。



イラストレーターなどWeb系フリーランスの場合には、融資が必要になる機会は少ないでしょう
しかし、一時的に生活が苦しくなった場合や、新たに事業を始める際の資金調達方法のひとつとして覚えておいて損はないはずです。
付加共済金を受け取れる場合がある
小規模企業共済では、加入期間が20年以上の契約者が退職等で共済金を受け取る際、付加共済金(ボーナスのようなもの)が加算される場合があります。
付加共済金は、長期間積み立てた契約者への優遇措置であり、加入期間が長いほど、受け取れる付加共済金の額が増えます。



フリーランスとして長く活動したいと考えているのであれば、早い段階で小規模企業共済に加入しておくのもおすすめです!
掛金の利回りは普通預金の金利よりも高いことが多い
小規模企業共済の掛金は、一般的な銀行の普通預金よりも高い利回りを期待できます。
銀行の普通預金は現在、0.001%程度の低金利ですが、小規模企業共済の共済金には付加共済金も加算されるため、長期的に見ると預金よりも有利な資産形成が可能です。
加えて、共済金は原則として元本割れしないため、安全性も高いのが特徴です。



新NISAやiDeCoなどと組み合わせれば、安全性と利回りを考慮しつつ資産形成を行えます
小規模企業共済に加入するデメリット
小規模企業共済には多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあるので、加入前に確認しておきましょう。
- 加入期間が1年に満たないと掛け捨てになってしまう
- 加入期間が20年未満だと元本割れする
- 掛金を経費にすることはできない
- 受け取った共済金には所得税がかかる
それぞれ詳しく解説していきます。
加入期間が1年に満たないと掛け捨てになってしまう
小規模企業共済は、加入後1年未満で解約すると、掛金が返還されず掛け捨てとなってしまいます。



短期間で解約してしまうと、損をしてしまうのでご注意ください
例えば、事業を始めたばかりのイラストレーターが「とりあえず節税対策として加入してみよう」と考えた場合は、1年は加入を継続できるかシミュレーションしておきましょう。
加入期間が20年未満だと元本割れする
小規模企業共済では、加入期間が20年未満で任意解約すると、元本割れしてしまうのでご注意ください。
任意解約に該当するのは、下記のケースです。
- 自己都合で解約した場合
- 12ヶ月以上にわたり掛金を滞納し、強制解約された場合
一方で、任意解約ではなく廃業による解約であれば、元本割れすることはないとされています。



また、掛金を途中で減額した場合も、元本割れする可能性があるので注意しましょう
掛金を経費にすることはできない
小規模企業共済の掛金は、所得控除の対象にはなるものの、経費として計上することはできません。
小規模企業共済の掛金を支払った際、プライベート用の口座から支払っていれば仕訳は不要です。



支払った金額を確定申告で計上しましょう
受け取った共済金には所得税がかかる
小規模企業共済の共済金は、受け取り方法によって異なる税制が適用されます。
いずれの方法でも一定の所得税が課税されるため、税金対策を考えておきましょう。
受け取り方による課税の違いは以下のとおりです。
- 一括受取(退職所得扱い):退職所得控除が適用されるため、税負担が軽減される
- 分割受取(年金扱い):公的年金等控除の対象になるが、毎年の所得税・住民税がかかる
- 一括+分割併用:それぞれの税制が適用される
一括受取は、長期間加入している場合は退職所得控除が大きくなるため、税負担を軽減しやすいのがメリットといえるでしょう。
一方、分割受取は公的年金と同じ扱いとなるため、毎年の所得税・住民税に影響が出る可能性に注意しなければなりません。



とはいえ、個人事業主歴が長い場合には、国民年金1号の加入歴が長いことが予想されます
そのため、受け取れる公的年金の金額もそれほど多くはなく、小規模企業共済の共済金の税負担が重くなることは考えにくいでしょう。
小規模企業共済に加入するのがおすすめな人
小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主が退職金を積み立てるための制度であり、加入を検討すべき人の特徴は、主に下記の通りです。
- 長期的に事業を続ける予定のあるフリーランス
- 所得税や住民税をできるだけ節税したい人
- 老後資金を計画的に準備したい人
個人事業主は国民年金に加入するため、厚生年金よりも将来受け取れる年金額が少ない可能性があります。
そのため、小規模企業共済などの制度を活用し、できるだけ将来に備えておくことをおすすめします。
小規模企業共済に加入する方法・必要書類
小規模企業共済に加入するには、所定の手続きと必要書類の提出が必要です。
申込み方法および必要書類は、下記の通りです。
申込みできる人 | ・個人事業主 ・会社等役員(従業員数などの要件を満たしている必要がある) |
---|---|
申込窓口 | ・オンライン ・中小機構の窓口 |
必要書類 | 【個人事業主の場合】 ・契約申込書 ・預金口座振替申出書 ・所得税の確定申告書の控えもしくは開業届の控え |
イラストレーターが小規模企業共済以外で節税する方法
イラストレーターなどの個人事業主が所得税や住民税を節税する方法は、小規模企業共済以外にも下記の方法があります。
- 経費を漏れなく計上する
- 青色申告を適用する
- 所得税の控除を漏れなく適用する
- ふるさと納税をする
- 小規模企業共済に加入する
- iDeCoを積み立てる
詳細は「」の記事で詳しく解説しているので、よろしければ併せてお読みください。


小規模企業共済についてよくある質問
最後に、小規模企業共済についてよくある質問を回答とともに紹介していきます。
- 小規模企業共済は誰でも加入できますか?
-
小規模企業共済に加入できるのは、個人事業主や会社等役員、個人事業主の共同経営者などです。
- 小規模企業共済が潰れる可能性はありますか?
-
小規模企業共済は国が管轄する中小企業基盤整備機構が運営しており、財務基盤は安定しています。
そのため、制度自体が突然破綻する可能性は極めて低いですが、法律改正などで制度が変更される可能性はあります。
- 就職・法人成りなど小規模企業共済の加入資格がなくなったらどうなりますか?
-
就職などで小規模企業共済の加入資格がなくなると、共済契約を解約しなければなりません。
20年以上加入をしていれば、共済金を全額受け取れるものの、20年未満だと元本割れしてしまう恐れがあります。
【まとめ】できるだけ節税したいなら小規模企業共済の加入を検討しましょう
小規模企業共済に加入すれば、個人事業主の老後資金を確保しやすくなります。
加えて、小規模企業共済の掛金は全額所得控除の対象となるので、現在の所得税や住民児を節税するのにも役立ちます。
イラストレーターなどのフリーランスが節税する方法は、いくつかあるので、自分に合った制度を活用して節税対策していくことが重要です。
このブログでは、イラストレーターをはじめとするWeb系フリーランスの節税対策や確定申告について解説しています。



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