売上・経費の記録をつけようと思ってるんだけど仕訳って何?
売上が発生したとき、経費がかかったときの仕訳方法を知りたい!
本記事では、上記のようにお悩みの人に向け、イラストレーターがよく使う仕訳例を紹介します。
確定申告が必要かどうかや扶養から外れるかどうか判断するには、売上や所得を計算しなければなりません。
所得は「売上-経費」で計算できるため、売上・経費を普段から記録しておく必要があります。
そして、売上・経費を記録するのであれば、複式簿記による記帳・仕訳をしておくのがおすすめです。
複式簿記で仕訳をすれば青色申告を適用でき、節税できるからです!
本記事では、イラストレーターが仕事を受注して納品、報酬を受け取るまでの流れを仕訳例付きで紹介します。
なお、イラストレーターといっても様々な働き方がありますが、本記事では個人で活動しており、企業・個人向けにイラストを制作・販売している人向けに書いています。
同人作家や自分で描いたイラストをグッズにして販売している人は、仕訳が異なる場合があるのでご注意ください。
また、請求書作成や会計処理はクラウド会計を使うと、大幅に時短できます。
イラストレーターにおすすめのクラウド会計については「イラストレーターにおすすめのクラウド会計3選|メリットや選び方とは?」で紹介しています。
【仕訳例付】イラストレーターが受注して納品・報酬を受け取るまでの流れ
まずは、イラストレーターが仕事を受注してから制作し、納品・報酬を受け取るまでの流れを仕訳例付きで紹介します。
- 仕事を受注する
- イラストを制作する
- イラストを納品する
- 修正依頼に対応する
- 納品し請求書を送付する
- 報酬を振り込んでもらう
それぞれ詳しく紹介していきます。
仕事を受注する
まずは、個人や企業から依頼を請けます。この段階では見積書を提出し、条件や納期、報酬金額などを確認します。
「言った・言わない」のトラブルにならないように、契約書を交わしておくと良いでしょう
A社からイラスト制作を受注され条件に合意し、契約書を交わした
上記の時点では契約書を交わしただけであり、収益は発生していないので仕訳は必要ありません。
ただし、売上や経費、収益を管理するために、売上・経費の見込額は把握しておきましょう
イラストを制作する
仕事を受注後はイラスト制作に取り掛かります。制作過程で素材やツール、資料などを購入した場合は、経費として仕訳します。
A社から依頼を請けたイラストを制作するために、資料として2,000円の書籍を事業用クレジットカードで購入した
仕訳例は、下記の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
新聞図書費 | 2,000円 | 未払金 | 2,000円 |
イラスト制作のために、制作用ツールの年間料金10,000円を事業用クレジットカードで支払った
仕訳例は、下記の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
購入した内容や支払い方法によって、借方・貸方の勘定科目は変わってきます。
イラストレーターが経費にできる支出は「【仕訳例付】イラストレーターが経費にできる13のもの|経費にできないものは?」で詳しく紹介しているので、よろしければお読みください。
イラストを納品する
完成したイラストを依頼主に納品します。この時点では、クライアントが検収していないので、校了にはならず報酬は発生していないと考えられます。
A社から依頼されていたイラストが完成し、データで納品した
この時点では、収益が発生していないと考えられるため、仕訳は必要ありません。
ただし、トラブル防止のために納品日は記録しておくと安心です
修正依頼に対応する
場合によっては、1度の制作・納品で校了とならず、修正を依頼されることもあるでしょう。
この場合も、収益が発生していないので仕訳は必要ありません。修正対応時に何らかの費用が発生した場合は、経費を仕訳しておきます。
先日A社に納品したイラストについて、1点修正を依頼された。すぐに対応し、再びデータで納品した
売上も費用も発生していないので、仕訳は必要ありません。
仕訳自体は必要ないものの、仕事の効率アップ、トラブルを避けるためには、契約時に修正回数や内容についても取り決めておくと安心です。
納品し請求書を送付する
修正が完了し検収扱いになったら、請求書を発行・送付しましょう。請求書には、下記の項目を記載します。
- 業務内容
- 報酬額
- 振込先
- 氏名
- 振込期限
請求書はクライアントがフォーマットを用意している場合もあるので、①自分で作成するのか、②相手が依頼したものを使うのか、確認しておきましょう!
なお、請求書発行時点で収益が発生したと考えられるので、売上の仕訳をします。
A社から依頼されていたイラストが検収となったので、50,000円分の請求書を作成し送付した
請求は月末に振り込まれる予定である
仕訳例は、下記の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 50,000円 | 売上 | 50,000円 |
なお、取引先が企業の場合、イラスト制作の報酬の一部が源泉徴収される可能性があります。
企業がイラストレーターやWebライターの報酬の一部から所得税を差し引くことであり、企業は差し引いた源泉徴収分を税務署に支払う義務があります
①源泉徴収されるのか、②源泉徴収額は自分で計算するのか取引先が計算するのかを確認しておきましょう!
源泉徴収される場合、売上が実際に振り込まれたタイミングで仕訳をします。
報酬を振り込んでもらう
契約書で取り決めた期日になったら、請求書に書かれた報酬を振り込んでもらえるはずです。
売掛金の消滅、普通預金の入金の仕訳をする必要があります
A社に50,000円の請求書を送った後、月末になり報酬の10.21%は源泉徴収された額が振り込まれていた
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 44,895円 | 売掛金 | 44,895円 |
事業主貸(源泉徴収額) | 5,105円 | 売掛金 | 5,105円 |
事業主貸は源泉徴収以外でも頻繁に使用する勘定科目です。
確定申告時に源泉徴収額を漏れなく計算するためにも、補助科目を設定しておくと便利です。
多くの場合、振込手数料は取引先が負担してくれることが多いのですが、契約時に確認しておきましょう。
ちなみに、振込手数料を自分で負担した場合の仕訳例は下記の通りです。
A社に50,000円の請求書を送った後、月末になり報酬の10.21%は源泉徴収された額と振込手数料315円を引かれた金額が振り込まれていた
仕訳例は、下記の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 44,580円 | 売掛金 | 44,580円 |
事業主貸(源泉徴収額) | 5,105円 | 売掛金 | 5,105円 |
支払手数料 | 315円 | 売掛金 | 315円 |
振込手数料は「支払手数料」で処理するのが、一般的です。
【イラストレーター向け】請求書の書き方・記載項目
先ほどもちらっと解説したのですが、イラストレーターが仕事をした際には請求書を送ることも多いです。
取引先の規模が大きい場合、自社で専用の請求書を用意している場合もあります。
請求書作成・送付が二度手間にならないように、事前にどんな請求書を作成したら良いか確認しておくと安心です。
また、クラウドソーシングなどを介して仕事をした場合、そもそも請求書の作成が不要でシステム上で決済される場合もあります。
自分で請求書を作成する場合、下記の項目を記載しておきましょう。
- タイトル(請求書と書いておく)
- 発行日
- 請求番号(通し番号をふっておくと漏れが発生したときに発見しやすいです)
- 依頼主の情報(社名、部署・担当者名、住所など)
- 自分の情報(氏名、住所・連絡先など)
- 振込先に関する情報(金融機関名や支店名、口座番号)
- 納品内容
- 請求金額
- 振込期限
- インボイスの登録番号(登録済みの場合)
「請求書 フォーマット」「フリーランス 請求書 フォーマット」などで検索すると、無料で使えるテンプレートを発見できます。
イラストレーターが仕訳・会計処理をするときの注意点
イラストレーターが受注・制作時に仕訳をする際には、請求書や領収書を5〜7年間は保管しておきましょう。
仕訳・会計処理時の注意点を詳しく紹介していきます。
取引先が法人の場合は源泉徴収の有無を確認しておく
取引先が法人の場合、源泉徴収されるか確認しておきましょう。
企業がイラストレーターやWebライターの報酬の一部から所得税を差し引くことであり、企業は差し引いた源泉徴収分を税務署に支払う義務があります
源泉徴収が行われる場合、請求書作成の際、下記について注意しておきましょう。
- そもそも源泉徴収を行うのか
- 源泉徴収の計算は自分が行うか、取引先が行うか
- 請求書には源泉徴収額を記載すべきか
- 仕訳・会計処理を楽にしたいならクラウド会計を導入する
極まれに「自社で源泉徴収は計算するので、額面通りの請求書を送ってほしい」と言ってくる企業もあります。
なお、源泉徴収は企業側(源泉徴収をする側)に義務が設定されています。
万が一、企業と取引しているにもかかわらず源泉徴収されない場合も、イラストレーターが罰則を受けることはないのでご安心ください。
請求書・領収書は5〜7年間保管しておく
請求書や領収書は、5〜7年間は保管しておきましょう。
確定申告時に請求書・領収書を提出する必要はありませんが、保管義務は白色申告・青色申告ごとに下記のように設定されているからです。
確定申告の種類 | 領収書・請求書の保管義務 |
---|---|
白色申告 | 5年間 |
青色申告 | 7年間 |
私は大きめのジップロックに月ごとに領収書を保管しています。
以前は、ノートに貼り付けていたのですが、あまりにも量が多いのでやめました……
勘定科目・仕訳のルールは一度決めたら継続する
勘定科目や仕訳ルールは、一度決めたらむやみに変更しないようにしましょう。
会計には継続性の原則と呼ばれるルールがあり、一度決めた会計処理のルールを正当な理由なく変更してはいけないと決められているからです。
理由なく勘定科目や仕訳方法を変更できてしまうと、恣意的な会計処理ができてしまい、節税対策に使えてしまう恐れがあるからです
例えば、イラストレーターの場合、購入したデジタル素材集は「消耗品費」なのか「通信費」なのか迷ってしまうかもしれません。
- 買い切り型の素材・写真:消耗品費
- サブスク型・月額利用料がかかる素材:通信費
上記のように、自分でルールを決めたら、そのルールを変えずに仕訳し続けることが重要です。
とはいえ、変更にあたって正当な理由があれば認められます。
例えば、私の場合は数年前と現在では稼働時間が異なるため、家事按分の割合を変更しました。
極端な話、税務調査があったときに変更の根拠を示せれば、大きな問題にはならないと考えています
仕訳・会計処理を楽にしたいならクラウド会計を導入する
イラスト制作・販売に集中するために、仕訳・会計処理を効率化したいのであれば、クラウド会計の導入を検討しましょう。
クラウド会計とは、インターネット上で利用できる会計システムであり、下記の特徴があります。
- 金融機関などと連携し、取引時に自動仕訳してもらえる
- 質問に回答するだけで自動的に確定申告書を作成できる
- スマホアプリを使用して確定申告書を提出できる
- 関連ツールで請求書の作成、管理もできる
クラウド会計にはいくつか種類がありますが、下記の3社は大手で信頼性が高くおすすめです。
クラウド会計 | 特徴 |
---|---|
マネーフォワードクラウド確定申告 | クラウドワークスなどイラストレーターが利用するサービスとの連携機能が豊富 |
freee | 簿記・会計の知識がなくても操作しやすいシンプルな機能が魅力 |
やよいの青色申告オンライン | 過去に弥生会計を使用した経験がある人や簿記の基礎知識がある人に最適 |
イラストレーターにおすすめのクラウド会計は「イラストレーターにおすすめのクラウド会計3選|メリットや選び方とは?」で紹介しているので、よろしければお読みください。
イラストレーターが受注・納品する際によくある質問
最後に、イラストレーターが受注・納品する際によくある質問を回答と共に紹介していきます。
- イラストレーターが請求書に記載する内容とは?
-
イラストレーターが請求書を作成する場合、下記の項目を記載しておきましょう。
- タイトル(請求書と書いておく)
- 発行日
- 請求番号(通し番号をふっておくと漏れが発生したときに発見しやすいです)
- 依頼主の情報(社名、部署・担当者名、住所など)
- 自分の情報(氏名、住所・連絡先など)
- 振込先に関する情報(金融機関名や支店名、口座番号)
- 納品内容
- 請求金額
- 振込期限
- インボイスの登録番号(登録済みの場合)
- イラストレーターが請求書を送付するタイミングはいつ?
-
請求書を送付するタイミングは、契約内容によって変わってきますが、下記のタイミングが多いです。
- 納品完了後(継続でなく1回限りの契約の場合に多いです)
- 月末・月初(継続の場合に多い、締め日を設定しており、過ぎたら請求書を送る)
請求書の送付が遅れる、漏れると取引先にも迷惑がかかりますし、信頼関係が失われる可能性もあるのでご注意ください。
- イラスト販売の勘定科目は何にすべきですか?
-
イラストレーターが売上を記録する際の勘定科目は、基本的に「売上高」を使用します。
- イラストレーターが経費にできる費用は?
-
イラスト制作・販売に使用した費用は、原則として経費に計上できます。
具体的には、下記を経費として計上できることが多いです。- イラスト制作に使用したパソコン代やデジタルツール代
- イラスト制作ソフトや制作・販売に使用しているツールの更新料
- 紙や絵具などの画材購入費用
- 資料代
- 取材に行った際の交通費
- インターネット料金、スマホ代(自宅を仕事場にしている場合は一部のみ)
- 外注費用
【まとめ】売上・経費の処理は継続が重要です
イラスト制作、販売によって利益を得ている場合は、売上や経費を集計して確定申告に備えておく必要があります。
副業イラストレーターの場合は年間所得が20万円を超えたら、他に仕事をしていない専業イラストレーターの場合は年間所得が48万円を超えたら確定申告が必要です。
売上や経費の処理をする際には、節税効果の大きい青色申告にも対応できるように「複式簿記」で記録しておくことをおすすめします!
本記事では、イラストの依頼を請け、制作・納品し、振込してもらうまでの仕訳例を紹介しました。
簿記や会計の知識がない人でも、本記事で紹介した仕訳例を活用すれば処理できますし、クラウド会計を使用すれば振込時や支出時の仕訳はAIが自動で行ってくれます。
この記事を読んだ人が1人でも多く、確定申告や日々の会計処理に関するお悩みを減らせることを願っています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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