先日、企業のオウンドメディア用のイラストを制作したら請求書の金額と振込額が違いました
何かの間違いでしょうか?
以前、仕事をした相手から支払調書が送られてきたんだけど、どうすればいいですか?
本記事では、上記のように悩む人に向け、イラストレーターの報酬の源泉徴収について、わかりやすく解説していきます。
契約時に決まっていた報酬と実際の振込額が異なる場合、報酬の一部が源泉徴収されているかもしれません。
源泉徴収とは、法人がイラスト制作を個人に依頼した場合、報酬の一部を預かりイラストレーターの代わりに所得税を納めておく制度です。
源泉徴収によって払いすぎた所得税は確定申告をすれば、還付金として受け取れます!
確定申告が必要ない人でも、申告することで得する可能性がありますよ!
そのため、報酬の一部が源泉徴収された場合は、金額と取引先の企業名・住所を確認しておきましょう。
本記事では、イラストレーターに行われる源泉徴収とは何か、源泉徴収された場合の対処法を解説します。
確定申告を楽にすませたいのであれば「イラストレーターにおすすめのクラウド会計3選|メリットや選び方とは?」の記事も、併せてお読みください。
源泉徴収とは?イラストレーターが知っておくべきこと2つ
源泉徴収とは、企業がイラスト制作を個人に依頼した場合、報酬の一部を徴収し個人の代わりに納税しておく制度です。
サラリーマンの給料も源泉徴収されていますし、イラストだけでなくWebライターの原稿料も報酬の10.21%源泉徴収されます。
源泉徴収は依頼元である企業があなたの代わりに納税してくれているお金です。そのため、確定申告で最終的な納税額を計算すれば払いすぎていた源泉徴収分は還付金として返還されます。
- 源泉徴収は依頼元である企業が、個人の代わりにあらかじめ税金を払ってくれている制度
- 源泉徴収によって税金を払いすぎていた場合は、確定申告をすれば還付金を受け取れる
源泉徴収が必要なのにされていない場合もペナルティはない
以前、別の企業と仕事をしたときは源泉徴収されてなくて契約金額通りの報酬を受け取れました
後から源泉徴収されていないことが問題になりますか?
源泉徴収はあくまで依頼元である企業側の義務であり、源泉徴収される側のイラストレーターに義務はありません。
したがって、イラストレーターが源泉徴収されていない報酬を受け取っても、ペナルティを受けることはないのでご安心ください。
なお、依頼元である企業は源泉徴収が必要なのにしないでいると、罰則を受ける恐れがあります。
とはいえ、確定申告書にはその年の1月1日から12月31日までに行われた源泉徴収額を記入する必要があります。
そのため、イラストレーター側も源泉徴収が行われているか、いくらされているかは確認しておかなければなりません。
税務署は税金を払いすぎている人については個別に教えてくれることはないので、自分で源泉徴収額を把握し、税金の払いすぎを防ぎましょう!
源泉徴収額は確定申告時に還付金として受け取れる場合がある
源泉徴収は、企業がイラストレーターの代わりにあらかじめ所得税を納税してくれたものです。
「源泉徴収額>本来納税すべき金額」となる場合、確定申告をすると還付金を受け取れます。
イラストやデザイン、原稿料などクリエイティブ系の源泉徴収は報酬の10.21%です。
一方、所得税は累進課税制度であり、税率は下記の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 97,500円 |
330万円から649万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
所得が少なく所得税率が10.21%より低い人は、還付金を受け取れる可能性が高いので、確定申告することをおすすめします!
その年の源泉徴収額を計算する方法は、本記事の後編で解説します。
イラストレーターの報酬は源泉徴収される?
報酬の一部が源泉徴収されるかは、仕事内容や依頼元が法人かどうかで変わってきます。詳しく見ていきましょう。
法人からの依頼の場合:10.21%源泉徴収される
法人(企業や団体)からイラスト制作やデザインの依頼を受けたイラストレーターは、原則として報酬額の10.21%が源泉徴収されます。
10.21%の内訳は、下記の通りです。
- 所得税:10%
- 復興特別所得税:0.21%
例えば、10万円の報酬を受け取った場合、実際に振り込まれる金額は10万円から10.21%が差し引かれた89,790円です。
契約金額と実際の振込額が違う場合、源泉徴収されている可能性が高いです
とはいえ、依頼元の法人が源泉徴収を行わないケースもありますし、振込金額を間違えている可能性もゼロではないので、報酬について不明点がある場合はクライアントに確認しましょう。
個人からの依頼の場合:源泉徴収されない
依頼元が個人の場合は、源泉徴収は行われません。源泉徴収の義務があるのは法人のみであり、個人にはないからです。
例えば、個人からブログアイコンやYouTubeのサムネイル画像を依頼された場合、源泉徴収されることはありません。
契約金額=実際の振込額となるはずです
個人からの依頼は源泉徴収されないものの、所得には含まれ確定申告の対象になることに変わりはありません。
その年の売上と経費を計算しておき、年間所得が20万円・48万円を超えたら確定申告をする必要があります。
イラストレーターが源泉徴収され還付金を受け取るまでの流れ
源泉徴収をするのは依頼元の義務ではあるものの、イラストレーターは①源泉徴収が行われるのか、②いくら源泉徴収されたかは確認しておく必要があります。
- 請求書を発行する
- 売上・源泉徴収に関する仕訳をする
- 確定申告書に源泉徴収額を記載する
- 還付金を受け取る
イラストレーターが行う作業、注意点を解説していきます。
STEP① 請求書を発行する
依頼元が法人の場合、請求書を作成・発行する際に下記を確認しておきましょう。
- 源泉徴収を行ってくれるのか
- 源泉徴収の金額は誰が計算するのか(請求書に記載しておく必要があるのか)
私はWebライターであり仕事内容は異なりますが、個人で企業と取引している点は共通しています。
その経験を踏まえて言わせていただくと、取引先の企業によって対応は様々でした。
- 源泉徴収を行ってくれない(いいのか?と思いつつ管理が楽+手取りが増えるので嬉しい気持ちもある)
- 源泉徴収はするが、金額は取引先が計算するため請求書は額面通りの報酬で作成する
- 源泉徴収をするので、請求書には①額面通りの金額と②源泉徴収額、③振込額を記載する
- クラウドソーシング経由の仕事なので当初の契約通りに振り込まれる
取引先が増えた場合、どんな書式の請求書を求めているか初回の請求書作成前に確認しておきましょう!
自分で源泉徴収額を計算する場合、報酬の10.21%が源泉徴収額となります。
- 報酬が10万円の場合
- 源泉徴収額は 10万円 × 10.21% = 10,210円
自分で計算せずクライアントが計算する場合も、念の為、源泉徴収額を計算しておくことをおすすめします。
STEP② 売上・源泉徴収に関する仕訳をする
請求書を送り実際に報酬が振り込まれたら、仕訳をしておきましょう。
源泉徴収が行われた場合の仕訳には「事業主貸」を使用します。請求書送付時および報酬振込時の仕訳例は、下記の通りです。
仕訳例:取引先からイラスト制作料として報酬10万円を受け取った。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
仕訳例:以前請求書を送付した取引先から源泉徴収額が差し引かれた金額が無事振り込まれた
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 89,790円 | 売掛金 | 89,790円 |
事業主貸(源泉徴収) | 10,210円 | 売掛金 | 10,210円 |
クラウド会計と銀行口座を紐付けておけば、入金時に振込に関する仕訳はしてもらえるので、源泉徴収分を手動で追加する形になるはずです。
なお、源泉徴収されたときに使用する勘定科目「事業主貸」は他にも、下記のシーンで使用します。
- 事業用口座から生活費を引き出した
- 事業用口座から事業に関係ない費用を支払った
上記のようなプライベートの引き出し・支出と源泉徴収額を混合しないようにするために、補助科目に「源泉徴収」と設定しておくと良いでしょう!
STEP③ 確定申告書に源泉徴収額を記載する
確定申告書には、源泉徴収額を記載する必要があります。源泉徴収額は「税金の計算」の「源泉徴収額(48)」に記載します。
クラウド会計や確定申告書作成コーナーを用いて確定申告書を作成する場合、源泉徴収額を聞かれるので1年の合計額を記入しましょう。
また「確定申告書第二表の所得の内訳」には、下記の情報を記載しなければなりません。
- 源泉徴収を行った取引先名(所在地が必要な場合もある)
- 収入金額
- 源泉徴収税額
所得の内訳についても、確定申告書コーナーやクラウド会計を使用すれば、質問に回答していくだけで記入が完了します。
イラストレーターの確定申告については「」で詳しく紹介しているので、よろしければお読みください。
STEP④ 還付金を受け取る
確定申告書提出後は1〜2ヶ月後に還付金が振り込まれます。
確定申告書に記載しておいた銀行口座に自動で振り込まれるので、追加の手続きなどは必要ありません。
還付金が振り込まれたときの仕訳は、下記のように行います。
例:源泉徴収されていた10,210円が還付金として事業用口座に振り込まれた。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 10,210円 | 事業主借 | 10,210円 |
所得税の還付金は個人に返還されるお金なので「事業主借」で処理する必要があります。
確定申告書に記載した還付金受け取り口座がプライベート口座だった場合は、そもそも仕訳は必要ありません
イラストレーターが請求・確定申告時に注意すべきこと
本記事で解説してきたように、イラストレーターの報酬が源泉徴収されるかは、依頼元が法人かどうか、業務内容によって変わります。
確定申告でミスしないようにするには、下記に注意しなければなりません。
- クライアントが源泉徴収を行うか確認しておく
- 源泉徴収してきた企業名・住所を確認しておく
- クライアントが支払調書を発行してくれるか確認しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
クライアントが源泉徴収を行うか確認しておく
請求書を送付する前に、クライアントが源泉徴収を行うか確認しておきましょう。クライアントが法人の場合、報酬に対して10.21%の源泉徴収を行う義務があります。
一方、クライアントが個人の場合、源泉徴収は義務付けられていません。
法人相手に仕事をする場合は、①報酬は源泉徴収してもらえるのかと②源泉徴収額は誰か計算するのかを確認しておきましょう。
源泉徴収してきた企業名・住所を確認しておく
源泉徴収を行った企業名や住所は、確定申告時に記載する必要があるので把握しておきましょう。
企業が支払調書を送付してくれる場合は、支払調書に取引先の企業名や法人番号など確定申告時に必要な情報がすべて記載されているので正確に写せばOKです。
一方、支払調書が送られてこない場合は、自分で取引先企業の正式名称や所在地を確認する必要があります。
クライアントに直接尋ねても良いですが、私は企業の公式HPの会社概要を確認して所在地を確定申告書に記載しています
支払調書を取引先がくれない場合の対処法は、下記の通りです。
記載内容 | 確認すべき資料・確認方法 |
---|---|
収入金額 | クラウド会計やエクセルでつけている帳簿を転記する |
源泉徴収額 | クラウド会計やエクセルでつけている帳簿を転記する |
取引先名 | 取引先の公式HPの会社概要に記載されている正式名称を記載する取引先にチャットやメールで質問する |
法人番号・所在地 | 取引先の公式HPの会社概要に記載されている所在地を記載する取引先にチャットやメールで質問する |
クライアントが支払調書を発行してくれるか確認しておく
取引先が源泉徴収を行う場合、確定申告シーズンに支払調書を送付してくれるか、確認しておきましょう。
法人が個人のイラストレーターに対して支払った収入と源泉徴収額を記載した書類です
支払調書があれば、いくら源泉徴収されていたかを自分で計算する必要がなく確定申告の作業が楽になります!
イラストレーターなど源泉徴収される側にとっては支払調書は便利な書類なのですが、法人側には支払調書を発送する義務がないことを理解しておきましょう。
近年では、コストカットのため支払調書の送付を嫌がる法人もいるのも事実です。
また、支払調書を送ってくれるものの3月上旬に届き「いや、確定申告とっくに終わってるよ……」と思ってしまうときもあります。
支払調書が送られてこない場合にも備え、イラストレーター側もどの取引先にいくら源泉徴収されているか計算しておくことが大切です。
私の場合は、クラウド会計の補助勘定やタグ付け、摘要欄にメモして対応しています
会計処理・確定申告はクラウド会計を使うのがおすすめ
本記事でも軽く解説してきましたが、会計処理や確定申告は、クラウド会計を活用すると手間を減らせます。
クラウド会計とは、インターネット上で利用できる会計ソフト・ツールであり、下記の特徴があります。
- 銀行口座やクレジットカードとクラウド会計を連携させれば、入出金・支出時に自動で仕訳をしてもらえる
- 必要事項を入力すれば、確定申告書を自動で作成してもらえるのでミスも減り、時短になる
- マイナンバーカードを読み取れるスマホがあれば、e-taxで確定申告書を提出できる
クラウド会計では補助勘定やタグによる分類もできるので、取引先ごとにいくら源泉徴収しているかもすぐに集計できます。
クラウド会計があれば、支払調書を送ってくれない、送付が遅れるクライアントがいても、自力で確定申告を行えます
クラウド会計は年間10,000円程度の使用料がかかるのですが、経費として計上できます。
加えて、青色申告特別控除の要件も満たせるので結果として費用以上に節税効果を得られる場合も多いです。
イラストレーターにおすすめのクラウド会計は、いくつかありますが、中でもおすすめなものは下記の3社です。
クラウド会計 | 特徴 |
---|---|
マネーフォワードクラウド確定申告 | クラウドワークスなどイラストレーターが利用するサービスとの連携機能が豊富 |
freee | 簿記・会計の知識がなくても操作しやすいシンプルな機能が魅力 |
やよいの青色申告オンライン | 過去に弥生会計を使用した経験がある人や簿記の基礎知識がある人に最適 |
毎月数万円をコンスタントに稼げるようになってきた、企業の取引先が増えてきた場合は、クラウド会計の導入を検討してみましょう!
イラストレーターにおすすめのクラウド会計は「イラストレーターにおすすめのクラウド会計3選|メリットや選び方とは?」で紹介しているので、よろしければお読みください。
よくある質問
最後に、イラストレーターの源泉徴収についてよくある質問を回答と共に紹介していきます。
- イラストレーターの報酬は源泉徴収の対象ですか?
-
企業が個人のイラストレーターに仕事を依頼した場合、デザイン料に分類され源泉徴収の対象となります。
ただし、源泉徴収の義務は依頼元である法人側に課せられるので、源泉徴収されなかったとしてもイラストレーターにペナルティはありません。 - イラストを制作・販売して収入を得ると確定申告が必要ですか?
-
イラストを制作、販売したことによる利益が一定額を超えると確定申告しなければなりません。
他に給料を受け取っている場合は年間20万円を超えたら、給料を受け取っていない場合は年間48万円を超えたら確定申告をしなければなりません。
- イラスト制作・販売の収入は雑所得に分類されますか?
-
イラスト制作・販売の収入は事業所得もしくは雑所得に分類されます。
イラスト制作が本業であり事業として制作・販売を行っている場合は事業所得として分類され、副業としてイラスト制作をしている場合は原則として雑所得に分類されます。
【まとめ】源泉徴収されたかと金額を確認しておきましょう
法人相手にイラスト制作・販売の仕事をすると、報酬の一部が源泉徴収される場合があります。
ただし、源泉徴収の義務は法人側にあるので、されていない場合もペナルティを受けることはありません。
源泉徴収額は確定申告書に記載しておくと、還付金として受け取れる場合があります。
- 収入金額
- 源泉徴収額
- 取引先の正式名称
- 法人番号もしくは所在地
上記の情報を控えておき、確定申告書に記載しておきましょう。
単発依頼してくれた企業など、確定申告時に漏れやすいのでご注意ください!
確定申告シーズンに慌てないようにするには、普段から源泉徴収額を補助勘定や摘要欄、クラウド会計のタグ機能などを使用して管理するのがおすすめです。
確定申告の手順について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてお読みください。
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